「自動運転」「オートパイロット」使用中の事故は誰の責任? ― 被害者・運転者が知っておきたい賠償の仕組み

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弁護士の瀬野 陽仁です。
本日は、近年急速に普及している「自動運転」「オートパイロット」機能と、その使用中に事故が起きた場合の責任についてお話しさせていただきます。

「ハンドルから手を離しても走ってくれる車」というイメージから、自動運転に大きな期待を寄せる方が増えています。もっとも、二〇二六年現在、市販車で誰もが利用できる「完全な自動運転」はまだ実現していません。実際に普及しているのは、あくまで運転者を補助する「運転支援」の段階です。

この違いは、万が一の事故で「誰が責任を負うのか」を左右する、非常に重要なポイントです。本コラムでは、自動運転のレベルの考え方から、オートパイロット使用中の事故の責任、被害者の方が賠償を受ける仕組みまで、できるだけ分かりやすく整理します。

「自動運転」には0〜5の6段階がある

自動運転は、国際的な基準(SAE)をもとに、運転をどこまでシステムが担うかによって「レベル0」から「レベル5」までの6段階に分類されます。日本の国や自動車メーカーもこの区分を用いています。大まかには、運転の「主体」が人からシステムへ移っていくイメージです。

運転の「主体」は誰か(ざっくりイメージ)
レベル1〜2
運転支援
主体は「人」
レベル3
条件付運転自動化
一定条件下は「システム」
レベル4〜5
高度・完全自動運転
主体は「システム」

ここで押さえていただきたいのは、各メーカーが「オートパイロット」等の名称で提供している運転支援機能(車線維持支援、車間距離制御、自動ブレーキなど)は、いずれも運転者が前方や周囲を監視し続けることを前提とした「レベル2」に位置づけられている、という点です。名前は「自動」でも、法律上の運転主体はあくまで人間なのです。

ポイント

「オートパイロット」=完全自動運転ではありません。現在市販されている機能の多くは、運転者に監視義務が残る「レベル2(運転支援)」です。過信は禁物です。

オートパイロット使用中の事故は「原則ドライバー責任」

国土交通省は、市販車に搭載されている「自動運転」をうたう機能について、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であって完全な自動運転ではない、と明言しています。そのうえで、こうした機能の使用中に「注意を怠ることは、極めて危険」であり、「万が一事故が発生した場合には、原則として運転者がその責任を負う」と明確に注意喚起しています(国土交通省報道発表資料)。

つまり、レベル2の機能を使っていて事故を起こしても、「車が勝手にやったこと」という言い訳は通りません。前方不注視やハンドル・ブレーキ操作の遅れがあれば、通常の交通事故と同じく、運転者本人が刑事・民事・行政上の責任を問われることになります。

被害者から見た賠償の仕組み ―― 自賠法の「運行供用者責任」

では、自動運転・運転支援機能を使う車にはねられた「被害者」の側は、どこに賠償を求められるのでしょうか。ここで大きな役割を果たすのが、自動車損害賠償保障法(自賠法)第三条の「運行供用者責任」です。

同条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています。加害車両の保有者(運行供用者)は、自ら運転していなくても、原則として賠償責任を負うということです。

しかも、免責が認められるのは、(1)自己及び運転者が運行に関し注意を怠らなかったこと、(2)被害者や第三者に故意・過失があったこと、(3)自動車に構造上の欠陥や機能の障害がなかったこと、の三つをすべて証明した場合に限られます。実際にこれらを立証するのは極めて困難で、「事実上の無過失責任」と言われるほど被害者に有利な仕組みです。運転支援機能を使っていたとしても、この責任が軽くなるわけではありません。

被害者の方へ

「相手はオートパイロットを使っていたから請求先が分からない」と諦める必要はありません。まずは加害車両の自賠責保険・任意保険を通じて賠償を求めるのが基本の流れです。

車やシステムの「欠陥」が原因のときは?

ブレーキが作動すべき場面で作動しなかったなど、自動車そのものやシステムの欠陥が事故の原因と疑われる場合には、自動車メーカーに対する製造物責任法(PL法)第三条に基づく責任追及も考えられます。同条は、製造物の欠陥により他人の生命・身体・財産を侵害したときは、製造業者等が損害を賠償する責任を負うと定めています。

ただし、被害者の方がいきなりメーカーの「欠陥」を立証するのは容易ではありません。そこで実務上は、まず自賠責保険・任意保険で被害者を救済し、その後に保険会社等がメーカーへ求償する、という整理が想定されています。被害者としては、まず保険を通じた救済を確実に受けることが先決です。

レベル3・レベル4になると何が変わる?

技術の進展を受け、日本でも法整備が進んでいます。二〇二〇年施行の改正により、一定の条件下でシステムが運転を担う「レベル3」が制度化され、道路交通法には「自動運行装置」という概念が導入されました。さらに二〇二三年四月施行の改正道路交通法では、いわゆる「レベル4」が「特定自動運行」として定義され、実施には対象地域を管轄する都道府県公安委員会の許可が必要とされています(無人の巡回バス等が想定されています)。

もっとも、こうした高度な自動運転が広がっても、被害者救済に空白を生じさせないため、当面は自賠法の運行供用者責任の枠組みを維持する方向で制度が整えられています。国土交通省は、二〇一八年(平成三十年)の研究会報告書でレベル4までの自動運転について従来の運行供用者責任を維持することが適当と整理し、さらに二〇二五年(令和七年)に公表した「ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会」報告書でも、レベル4の自動運転タクシー等が普及する段階においても、迅速な被害者救済の観点からこの整理を維持することが妥当であると再確認しました。まず自賠責保険で被害者を救済し、その後に保険会社等が自動車メーカーへ求償する仕組み(メーカーから保険会社への事故データ提供等)の整備も進められています。事故の原因究明のため、レベル3以上の車には作動状態を記録する装置の搭載が求められ、国による自動運転事故の調査体制(運輸安全委員会等)の整備も進んでいます。これらの記録は、責任の所在を判断する重要な証拠になります。なお、自動運転タクシーの本格実装を見据えた責任分担・補償の具体化に向けた検討は現在も続いており、今後の制度改正には引き続き注意が必要です。

事故に遭った・起こしたときの実務ポイント

自動運転・運転支援がからむ事故では、「そのとき機能がどう作動していたか」が争点になりやすく、証拠の保全が特に重要です。次の点を意識してください。

・ドライブレコーダーの映像、車両の作動状態記録装置やイベントデータレコーダーのログを消さずに保全すること。
・修理や廃車を急がず、必要に応じて車両を保存すること。
・「機能を使っていたか」「警告表示や引継ぎ要求があったか」を記録・記憶しておくこと。
・被害者の方は、保険会社の当初提示額が「自賠責基準」等にとどまり、裁判基準(弁護士基準)より低いことが少なくありません。弁護士が介入することで慰謝料等が増額できる余地があります。

よくあるご質問(FAQ)

Q 自動運転機能を使っていれば、事故を起こしても自分は無責任ですか?

A いいえ。現在市販されている運転支援(レベル2)は運転者に監視義務が残り、原則として運転者が責任を負います。「車任せ」は通用しません。

Q 加害者がメーカーの欠陥を主張しています。私は誰に請求すればよいですか?

A 被害者の方は、まず加害車両の自賠責・任意保険へ請求するのが基本です。欠陥の有無やメーカーへの求償は、その後に整理される問題で、被害者が最初から立証を背負う必要はありません。

Q 自動運転タクシー(ロボットタクシー)に乗っていて事故に遭ったら、乗客の私も責任を問われますか?

A いいえ。乗客は運行をコントロールする立場にないため、自賠法上の運行供用者責任を負うことはありません。賠償を請求すべき相手は、そのサービスを運営する運送事業者です(二〇二五年の国の検討会報告書でも、乗客は運行供用者に当たらないと整理されています)。

Q 相手が運転支援中だと過失割合は変わりますか?

A 運転支援の使用自体が直ちに過失割合を有利・不利にするわけではありません。実際の運転操作・前方不注視の有無・記録映像などをもとに、通常の基準で判断されます。【要確認:具体的事案ごとの検討が必要です】

まとめ

「オートパイロット」等の運転支援は、あくまでレベル2であり、事故が起きれば原則として運転者が責任を負います。一方で被害者の方は、自賠法の運行供用者責任という強力な仕組みにより、加害車両の保険を通じて救済を受けられます。レベル3・4へと進んでも、当面は被害者救済の空白を作らない制度設計が進められています。いずれのお立場でも、証拠の保全と適正な賠償額の見極めが鍵になります。

自動運転・運転支援がからむ事故は、証拠の集め方も賠償の考え方も通常より複雑です。

「提示された金額が妥当か分からない」「相手の言い分に納得できない」――そんなときは、お早めに当事務所へご相談ください。

042-704-6577

法律事務所S(相模原)/交通事故のご相談を承ります。

参考リンク(公的機関・一次情報)

国土交通省
現在実用化されている「自動運転」機能は、完全な自動運転ではありません
オートパイロット等はレベル2の運転支援であり、事故は原則として運転者の責任であると注意喚起した報道発表資料。
e-Gov法令検索
自動車損害賠償保障法(第三条・運行供用者責任)
加害車両の保有者が原則として賠償責任を負う「運行供用者責任」を定めた条文の原文。
e-Gov法令検索
製造物責任法(第三条・製造物責任)
製品の欠陥により損害が生じた場合にメーカー等が負う責任を定めた条文の原文。
e-Gov法令検索
道路交通法(「自動運行装置」「特定自動運行」の定義等)
レベル4=「特定自動運行」を定義し、公安委員会の許可制を定める根拠法の原文。
日本損害保険協会
自動運転(レベル4)に対する法的・実務的論点(概要)
レベル4段階でも当面は運行供用者責任の枠組みで被害者救済を図る考え方などを整理した資料。
国土交通省
ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会 報告書(令和7年4月)
レベル4の自動運転タクシー普及期でも運行供用者責任を維持し、乗客は運行供用者に当たらない等を整理した最新の報告書。