交通事故に遭った後、加害者と被害者の間で最も揉めやすいのが「過失割合」の問題です。適切な過失割合を獲得できるかどうかで、受け取れる賠償金額が大きく変わってくるため、正しい知識を持って交渉に臨むことが重要です。この記事では、過失割合でよくもめるケースとその対処法について解説します。
交通事故の過失割合とは
過失割合とは、事故の原因となった「被害者の過失(責任)」と「加害者の過失(責任)」を割合で表したものです。例えば「7:3」「8:2」などと表されます。この割合によって、最終的な損害賠償額が決まります。
被害者に過失があると、その割合分だけ受け取れる賠償金が減額されます。これを「過失相殺」といいます。例えば、損害額が100万円で過失割合が「加害者8:被害者2」の場合、被害者が受け取れる金額は80万円になります。
過失割合で揉める理由
過失割合で揉める主な理由は以下の3つです:
- 金銭的影響が大きい: 過失割合が変わると賠償金額も大きく変わります
- 警察は過失割合に関与しない: 過失割合は当事者間の話し合いで決めるため
- 事故状況の認識に食い違いがある: 双方の言い分が異なることが多い
過失割合でもめやすい典型的な4つのケース
1. 証拠が不足している場合
ドライブレコーダーや目撃者の証言など、事故状況を客観的に示す証拠がない場合、「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、過失割合で揉めることが多くなります。
対処法:
- できる限り証拠を集める(事故直後の写真、近隣の防犯カメラ映像など)
- 実況見分調書や供述調書など警察が作成した資料を取り寄せる
- 車両の損傷状況から事故の状況を推測できる資料を準備する
2. 損害賠償額が高額な場合
怪我が重傷だったり、後遺障害が残ったりして損害賠償額が高額になる場合、相手方保険会社は支払い額を抑えるために被害者の過失割合を大きくしようとすることがあります。
対処法:
- 相手方保険会社から提示された過失割合の根拠を書面で回答してもらう
- 根拠が不明確な場合は、過去の判例や事故事例を元に反論する
- 弁護士に相談し、適切な過失割合を主張してもらう
3. 過失割合が判断しにくい事故形態の場合
例えば、同一方向に走行していた車同士が同時に車線変更して衝突した事故や、信号機のない交差点での出合い頭事故など、どちらにどの程度過失があるのか判断が難しい事故もあります。
対処法:
- 事故現場の道路状況や交通量など、様々な要素を考慮した上で過失割合を検討する
- 「別冊判例タイムズ」など専門的な資料を参考にする
- どうしても合意できない場合は、「片側賠償」という解決方法を検討する
4. 駐車場内での事故の場合
駐車場内での事故は、道路交通法が適用されにくく、一般的な事故類型にも当てはまらないことが多いため、過失割合が揉めやすくなります。
対処法:
- 駐車場内の通路の広さや車両の動きなどを詳細に記録する
- 類似した事故の過失割合や判例を調査する
- 交通事故に詳しい弁護士に相談する
過失割合で揉めた場合の対処法
1. 相手方保険会社に根拠を求める
相手方保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合は、その根拠を書面で提出するよう求めましょう。口頭ではなく、必ず書面やメールなど証拠に残る形で行うことが重要です。
2. 片側賠償を検討する
「片側賠償」とは、双方に過失があるものの、一方だけが損害賠償責任を負うという示談方法です。例えば、過失割合が「9(加害者):1(被害者)」と提示されていても、被害者が「10:0」と譲らない場合、双方の協議により「9:0」とすることで合意する方法です。
この方法のメリットは:
- 被害者が加害者に賠償金を支払う必要がない
- 保険の等級が下がらずに済む
- 相手方と早期に解決できる
3. ADR(裁判外紛争解決手続)を利用する
ADRとは、裁判外で紛争解決手続きを行ってくれる機関です。代表的なものに「交通事故紛争処理センター」があります。中立公平な立場から、交通事故や損害賠償の専門家に和解のあっせんや賠償額の裁定を行ってもらえます。
4. 調停を利用する
調停とは、裁判所の調停委員会が仲立ちし、話し合いで法律的な問題を解決する手続きです。調停のメリットとして:
- 早期解決が見込める
- 第三者に間に入ってもらえる
- 公平な解決が期待できる
- 調停が成立すれば強制執行が可能
5. 弁護士に相談・依頼する
過失割合で揉めている場合、最も効果的な対処法は弁護士に相談することです。弁護士は交通事故の示談交渉のプロであり、法的知識を活かして適切な過失割合を主張・立証してくれます。
弁護士に依頼するメリット:
- 保険会社に言いくるめられることを防げる
- 相手のごね得を防止できる
- 専門知識を活かした交渉ができる
- 加害者とのやりとりの負担が軽減される
また、「弁護士費用特約」が付いた保険に加入していれば、弁護士費用を保険でカバーできる可能性があります。
まとめ
交通事故の過失割合は示談交渉の中で最も揉めやすい項目ですが、適切な対処法を知っておけば、不当に不利な過失割合を押し付けられることを防げます。証拠の収集や専門家への相談を通じて、公平な解決を目指しましょう。
特に損害額が大きい事故や、事故状況に争いがある場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士の専門知識と交渉力があれば、適切な過失割合の獲得と、それに基づく公正な賠償金の受け取りが可能になります。
